さまよう二人のEVA

novel

移動侵蝕型電脳都市CITY-01(九)梗概

「私は何者でもない。あなたに出逢った瞬間に私は私になる」
燃え盛る修道院を飛び出したエヴァ・シーレンは永遠の愛を求め穢れていった。リアルと電脳が混在する街でもう一人のEVAに出会う。
妖しいブロンドのエヴァ・リーブスは散々男に裏切られ食い漁るうちにファントムと呼ばれるようになった。
魑魅魍魎を従えるブロンドのEVAは『永遠の愛』を語る修道女くずれのEVAを嘲笑った。
「おまえが私に惨殺されたら愛しい王子様は泣き崩れるだろうが、四十九日も経たないうちにおまえと似た安い女を白馬に乗せる。賭けてもいい。暇さえあれば妄想にふけり、少し目を離した隙に誰かと情を交わすのが男という生き物だ。そのお盛んな精気を吸い尽くして殺すのが私の生き甲斐」
二人のEVAは刺し違え、その魂魄データは電脳都市に残留した。
カオスと化した京の都を呑み込んだシティーゼロワンにも二人の姿があった。
死んでも尚いがみあい殺しあう二人のEVAを『最凶のあばずれ』と称した産毛のベビーはこうも言った。『同族嫌悪の腐れ縁ほど厄介なものはない』
どちらのEVAも本物のアダムを探してさまよう、愛の亡霊――。

物語の主人公であるルイードの宗はEVAに遭遇したとき妙な既視感を覚えた。ゼロワンキングの座をかけた2ndイベント『crush and run』の血腥い戦場を模したフィールドで、兵隊ゾンビに囲まれた宗たちは劣勢に立たされていた。
サイバー仕様の単車ごとぶっとばされたエディーの元に仲間が駆け寄ると、その傍らに修道女が祈りの姿勢で佇んでいた。
「逃げろ!」宗が女に避難を呼びかけるが、なぜかゾンビの群れが後退り、敵のギルド連合共々潮が引くように去っていった。
最初、負傷者の介抱にきた修道女に見えたが明らかに様子がおかしい。レンズの使い手か、瞳が爛々と赤らんでいく。宗が左の鎖骨に飼うヒル(唇型の万能AIデバイス)が色めき立った。
ヒル「助けられたけど人道支援じゃなさそうね。キモンが言ってたっけ。話しかけられても頑なに無視を貫け、決して目を合わせるな、さくっと食われちゃうよって……あなたガン見されてるけど、まさか目を合わせてないよね?」
宗「もう手遅れかも」
ヒル「あれが好みのタイプとか言わないでよ」
宗「エディーのな。ちょっと黙っとけ」
修道女と向き合い穏やかに問いかけた。
宗「あんた、何者? 敵か味方か、それだけ教えてくれ」
女「I’m nobody When I find you I become me」
ヒル「量子もつれの話じゃなければ、愛の告白かしら。真っ赤なお眼鏡にかなったみたい。この際ダンスでいかせてやれば?成仏できるんじゃない。ねえ、永遠の愛を乞うエヴァシーレンさん」

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