シティーゼロワン 移動侵蝕電脳都市
老体にやさしいイブは高齢社会が生んだ。寝室から入れる電脳タウンのサービスは利便性を極め、表裏共に目覚ましい発展を遂げていた。平穏なリアルに寄り添うイブタウンの裏側にあるのは、京都に首都を置くサイバー都市のアダム。グレーな自由社会を邁進するアダムは基本無料で遊べる。ニートや引きこもりの寄る辺となり、リアルに戻らない者がいた。その出入り口でちらつく夜光虫が散見され、巷では「CITYが来る」と囁かれた。
あの日、俺はアダムの三条河原で消えた。リアルの東京で目覚めると、両親らしき男女が微笑んだ。0と1の羅列が脳裏を駆け上がり、記憶を痛撃する。後を追うように仲間が二人失踪した。俺のことを探しながらCITYについて聞き回っていたという。端末のアダムアプリが二人のオーバーステイを赤々と告げていた。俺は自分が消えた場所に向かい、どす黒いリンゴのアイコンを押した。
© 2019 Len Yasakado
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