犬と朝帰り

犬と朝帰り

「三日前の早朝に家を出ました――」

「それでも遅刻は遅刻」

「罰金ですか……せめて交通費を」

リアルエピソード8

ふてぶてしいレトリバーをこよなく愛す客がいた

犬の名はブライアン、略すと客がぶちきれる

ブラは甘やかされて育ったせいか、ホストを完全に見下し、写真詐欺に遭った初回客のごとく退屈そうにソファーに座す

その客はブラを人のように扱い、ヘルプを犬のようにこき使う

「人同様に接待しろ。さっさと水を出せ。コースター置けよ。まじ使えねえ」

口汚い彼女のせいで飛んだ新人は一人や二人ではない

大人の事情を考え合わせ、俺は悩んだ末に、ある決断をした

「君にとってブラ、イアンはかけがえのない親友なんだね」

「むしろ恋人以上、男はこいつで事足りてる」

「そっか。俺もブライアンを一人前の男だと認めるよ」

「もしかして若、口説いてんの?」

「ライバルには違いない。今日からブライアンを男と見なしてセット料金取るから」

「は?ふざけろ!犬のセット取る店がどこにある!」

「おしぼりとコースターまで出す店も少ないと思うが」

「じゃあいらねえ。くそヘルプ、コースターを下げろ!」

彼女はおしぼりをぶん投げた

それ見てブラがおびえてた

拙作ドランク・チェンジの主人公、冠木屋の果子は記憶を飛ばす酒乱ですが、ブライアンの恋人はそのモデルの一人であります。井川遥と吉瀬美智子をかけ合わせ、そこにぶっとんだ歌舞伎町の住人を織り交ぜました。みんな今頃どうしているでしょう